By
Genki Moriyasu
マジック・ザ・ギャザリングの新セットはおよそ3か月に1度、発売されている。
先日発売された『タルキール覇王譚』は、高い前評判を更に上回ってくるかのようなパワーカードたちの群れであった。
新セットが発売される度にスタンダードが、モダンが、レガシーが、そしてマジックというゲームが、大きく環境や内容を変えていく。
その"新しい環境"の正体を一番早く世界に知らしめる旗印となる大会は、実は各地のグランプリでもなく、そして新セット発売後に行われるプロツアーでもなく、"SCG
OPEN"というシリーズの大会だ。
マジック発祥の地であり世界で最もマジックが流行っているアメリカが誇る最大手カードショップ"StarCityGames.com"が主催する"SCG
OPEN"。
高額な賞金でありながらアメリカ国内で殆ど毎週のように開かれ、数百人もの参加者によって常に最新のデッキが覇権を競い合っている。
大会の様子や結果は常にライブやテキストカバレージによって更新され続け、それを受けてマジック・プレイヤーたちが自らのデッキを調整していく。
今やメタが構築される場所そのものであるといっても差し支えない影響力を持ってきているのが"SCG
OPEN"だ。
今週の"SCG OPEN"の結果を知らずに、来週のメタは読めない。
世界中の熱心なプレイヤーたちは"SCG OPEN"の結果に必ず目を通し、新しいデッキやテクニックが登場していないか、はたまた息を吹き返した古豪のカードはあるかを欠かさずチェックしている。
こうして"SCG OPEN"が示した新しい風となるデッキを、プロプレイヤーたちがプロツアーに持ち寄って洗練されたデッキリストへと昇華して、つづく各地のグランプリなどで広くプレイヤーたちが知ることになる。
こうしてデッキの軸となってゆくのが"SCG OPEN"だとすると、"SCG
Invitational"という大会は、対比的である。
各地の予選通過者と"SCG OPEN"の上位者のみが参加できる、完全招待制の大会であり年に一度の開催で、三日間にも及ぶスタンダードとレガシーの複合フォーマット。
賞金総額は五百万にも達し、優勝者が受け取る百万という賞金額はプロツアー以外ではそうそう見ることのない数字である。
モダンの制定以前から続いていることを考えても、構築力やプレイング、メタゲームやカードの知識とケア。
それが広く高い水準で求められるスタンダードとレガシーの複合という形での開催は、実質的に構築戦の大会としては最高峰のものに位置づけられるだろう。
副賞として優勝者のトークンカードが作成されて広く配布されることからも分かるように、"SCG
Invitational"は新しいデッキではなく、強いプレイヤーをフィーチャーする。
今一番勢いのあるプレイヤーは誰なのか。
今一番強いプレイヤーは誰なのか。
今一番、勝てるプレイヤーは誰なのか。
当然ながら参加者全員が強いプレイヤーであり、強いデッキを持ち込んできている。
その中で最も強いことを証明する戦いが、繰り広げられる。
その方向性や意義、熱量はプロツアーと比肩するものであり、"SCG
Invitational"のタイトルを獲るということは間違いなくその年、世界で一番強いプレイヤーの一人として名前が上がるということだ。
これまで日本国内では開催されてこなかった"SCG
Invitational"の予選大会。
日本人プレイヤーが予選にさえ出られないという、あまりに厚く高くそびえる壁を取り払ったのは、第1回BigMagicOpenだ。
BMO本戦と併催して、"SCG Invitational"予選である"SCG
Invitational challange"が今回も開催できた。
これは日本のトーナメント・シーンがアメリカの、そして世界のトーナメント・シーンに含まれたことを意味するだろう。
極東の島国である日本は隔離された島・ガラパゴスと揶揄されてきた。
インターネットの発展によって情報面での格差は減ってきているものの、地理的な弱さは健在だ。
個人で海外のグランプリへ出場するプレイヤーも増えてきてはいるものの、一部のプレイヤーは致し方ない部分が大きく、国内大会に留まっている。
"SCG Invitational Challeng"では固定で上位4名に"SCG
Invitational"参加資格が与えられ、優勝者にトラベル補助が行われる。
海外大会の参加にあたって、最もネックになりやすい航空機代という旅費が補助されるというのは、PTQ優勝同様、非常に力強い。
日本人プレイヤーが海外へと進出していくキッカケとするには、十分な大会だ。
そして今後も継続して"SCG Invitational
Challenge"が開かれていくというのは、日本のマジックをより世界的に、ますます成長させていくことだろう。
サイトの向こうにあった"SCG Invitational"という大会は、BMOの"SCG
Invitational Challenge"によって、現実のものになった。
"SCG Invitational Challenge"は日本人が"SCG
Invitational"に参加する為の特急券だ。
自らを一番強いプレイヤーであることを証明する為の、最も現実的で、最も身近な手段だ。
SCG
Invitational特設ページ
"SCG Invitational"本戦は12月12、13、14日。
次のセットとなる『運命再編』の発売日は、まだ迎えていない。
今日と変わらないカードプールで行われる。
BMOレガシーと併催されている今回の"SCG
Invitational Challenge"のフォーマットは、スタンダード。
同じくスタンダードで行われ、アブザン・ミッドレンジが制したプロツアーが明けて二週間。
未だ渦まくメタゲームを制し、贈られたチケットを手に世界へ挑むのは、誰だ。
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