By Takamasa Sato
猪木と馬場、どっちが強いのか?
ルフィと悟空、どっちが強いのか?
世界には数多くの「夢の試合」が存在する。
しかし、多くの「夢の試合」は実現しない。
時には、「世代の壁」によって。
時には、「大人の事情」によって。
「夢の試合」はプロレス界だけのものか?
あるいは、二次元世界だけのものか?
そんなことはない。
このマジックというゲームの世界にも存在するのだ。
もちろん、これまで実現しなかったのにはワケがある。
フォーマット…禁止カード…メタゲーム…。
実現しなくてもよいではないか?
そう思う人もいるだろう。
今=現行フォーマットの最強デッキこそ最強でいいじゃないか?
そんな考えもあるだろう。
しかし、私たちは知りたい。
どちらのデッキが強いのか。
私たちは見たい。
かつて憧れたあのデッキが、かつて最強と呼ばれたあのデッキを粉砕する姿を。
ここでならば見れる。
ここでならば戦える。
一度限りの頂上of頂上決戦!
Champion of Champions(以下、COC)、開幕!
今回のCOCは、プロプレイヤーである中島主税に会場を訪れたプレイヤーから選ばれた3人の挑戦者が挑むガンスリンガー方式。
しかも挑戦者は自らが使うデッキと中島の使うデッキの両方を選ぶことが出来るという、中島にとっては不利な条件のおまけつきだ。
果たして中島は挑戦者を退けることが出来るのか?
第1回戦
挑戦者が選んだのは、1995年の世界選手権を制した「黒き拷問台」!
数々の手札破壊呪文と《拷問台/The Rack(TSB)》というシナジーを軸に、リアニメイト要素を足した黒らしいデッキである。
1995年の世界選手権はスタンダードで行われた最初の世界選手権ということもあり、このデッキを「最古の王者」と呼ぶ者も少なくない。
対する「王者」代表・中島主税が駆るのは、あのジャーマンジャガーノート、世界最強の男カイ・ブッディ伝説の序章となった1998年世界優勝デッキ「
赤茶単」!
多数のマナアーティファクトを用いて《欲深きドラゴン/Covetous
Dragon(UDS)》などのファッティクリーチャーを叩き付け、《燎原の火/Wildfire(7ED)》でリセットする。
赤という色らしいド派手なデッキである。
奇しくも互いに色の特性を全面に出した単色デッキ。果たしてどちらの色が相手の色を塗りつぶすのか!?
ダイスロールの結果、先手は「黒き拷問台」の手に。これには中島も「マズイ」と一言。
相手のデッキには《拷問台/The Rack(TSB)》や《暗黒の儀式/Dark
Ritual(4ED)》からの《惑乱の死霊/Hypnotic
Specter(M10)》など、対処の難しい1ターン目のアクションが搭載されているのだ。
しかも、中島は初手に恵まれず、1マリガンからのスタートを余儀なくされている。
心なしか青ざめている中島を前に、挑戦者は《拷問台/The Rack(TSB)》をセット。
中島、「もうヤバい!」と叫びつつも《裏切り者の都/City
of Traitors(EXO)》から《束の間の開口/Temporal
Aperture(USG)》。
《ミシュラの工廠/Mishra's Factory(4ED)》でライフが削られていくが、あわてず騒がず2枚目の《裏切り者の都/City
of Traitors(EXO)》からの《スランの発電機/Thran
Dynamo(UDS)》《厳かなモノリス/Grim Monolith(ULG)》《呪われた巻物/Cursed
Scroll(TMP)》と超展開。
しかし、肝心の事態を打開するカードは引けていない。
挑戦者は《破裂の王笏/Disrupting Scepter(4ED)》を置き、じわじわ嬲り殺しの準備。
中島はため息を吐きながら《束の間の開口/Temporal Aperture(USG)》を起動するも、出てくるのが《緋色のダイアモンド/Fire
Diamond(MIR)》では何の回答にもならない。
それからも手札を責める挑戦者改め拷問者に対し、
中島の《束の間の開口/Temporal Aperture(USG)》からは《通電式キー/Voltaic
Key(M11)》《山/Mountain(M11)》と、パッとしないカードばかりが覗く。
それでも《呪われた巻物/Cursed Scroll(TMP)》は起動し続け、拷問者のライフを削っていく。
しかし、拷問者もまた引きが芳しくない。次なる一手を手に入れられず、ただ《破裂の王笏/Disrupting
Scepter(4ED)》を起動するのみ。
そして、中島はついに《欲深きドラゴン/Covetous Dragon(UDS)》を着地!
これで拷問者の束縛を逃れられるかと思いきや、《黒死病/Pestilence(4ED)》で殺された上に死体を《Dance
of the Dead(ICE)》されてしまう。
もちろん《破裂の王笏/Disrupting Scepter(4ED)》があるため、ドラゴンもおとなしく主人を鞍替えする。
これで勝負あったか?
と思いきや、中島の目がキラリと光る。
対戦相手のライフを確認…残りは5点。
おもむろに対戦相手の終了ステップに《呪われた巻物/Cursed
Scroll(TMP)》を起動すると、3枚の手札を差し出して《山/Mountain(M11)》を指定する。
不運な拷問者がランダムに《山/Mountain(M11)》を選んでしまうと、ニヤリと笑いながら《通電式キー/Voltaic
Key(M11)》を起動。
指定も、選ばれるのも再びの《山/Mountain(M11)》。
そして、自らのターンにもう一度起動し、ライフを奪い去ったのだ。
もちろん、中島の握りしめていた3枚の手札が全て《山/Mountain(M11)》だったことは、言うまでもない。
中島1-0挑戦者
第2回戦
続いての挑戦者が選んだのは赤茶単。ド派手な動きに魅せられたそうだ。
そして、中島に渡されたのはセレズニア対立。
ここ横浜で行われた2005年の世界選手権で帝王こと森勝洋を日本人初の優勝へと導いたロック系のデッキである。
色を変えた《対立/Opposition(UDS)》こと《制圧の輝き/Glare
of Subdual(RAV)》とトークンの組み合わせは実に凶悪であり、《明けの星、陽星/Yosei,
the Morning Star(CHK)》や《ロクソドンの教主/Loxodon
Hierarch(RAV)》などのパワフルなクリーチャーまで搭載している。
セレズニアのロックが決まる前に赤茶単側がリセットできるか…序盤の攻防がカギとなりそうだ。
先手は中島。1ターン目《ラノワールのエルフ/Llanowar
Elves(M11)》。2ターン目《セレズニアの聖域/Selesnya
Sanctuary(RAV)》と、往年の動きをそのまま辿っていく。
挑戦者は《通電式キー/Voltaic Key(M11)》から《束の間の開口/Temporal
Aperture(USG)》を。3ターン目以降のビッグアクションの準備を整える。
と、次なるドローに中島は驚きの表情。
「こんなカード、メインから入ってたっっけ!?」
半笑いで戦場に叩き付けたのは…《真髄の針/Pithing Needle(RTR)》!
これで挑戦者の《束の間の開口/Temporal Aperture(USG)》はただの置物に。
失笑する挑戦者を尻目に、中島はさらなる脅威として《梅澤の十手/Umezawa's
Jitte(BOK)》を送り出し、ニヤニヤしながらターンエンド。
しかし、挑戦者が握りしめるのもまた、王者のデッキである。
《厳かなモノリス/Grim Monolith(ULG)》を戦場に送り込むと《通電式キー/Voltaic
Key(M11)》から5マナをひねり出して、2枚目の《通電式キー/Voltaic
Key(M11)》と《スランの発電機/Thran Dynamo(UDS)》を生み出した。
これで、次なるターンには二桁のマナをひねり出せる計算だ。
《通電式キー/Voltaic Key(M11)》を指定しておけばよかった!と後悔したフリをする中島。
デッキ名の由来ともなった《制圧の輝き/Glare of Subdual(RAV)》を展開してロックの準備である。
こうなってしまうと、赤茶単でも厳しい。なんとかマナをひねり出して《欲深きドラゴン/Covetous
Dragon(UDS)》を送り出すが、《ラノワールのエルフ/Llanowar
Elves(M11)》によって寝かされてしまうのである。
そうこうしているうちに中島は《夜明けの集会/Congregation
at Dawn(RAV)》。
2枚の《明けの星、陽星/Yosei, the Morning
Star(CHK)》と《セレズニアのギルド魔道士/Selesnya
Guildmage(RAV)》を自らの軍勢に加える。
あとはもう、セレズニア対立の独壇場である。
《セレズニアのギルド魔道士/Selesnya Guildmage(RAV)》がトークンを生み始め、
《明けの星、陽星/Yosei, the Morning Star(CHK)》が《梅澤の十手/Umezawa's
Jitte(BOK)》を握って殴り始めると、ほどなく挑戦者のライフは尽きてしまった。
《燎原の火/Wildfire(7ED)》をもってしても、この連鎖を止めることは出来ない。
完全なロックが決まったと見た中島は、これに《梅澤の十手/Umezawa's
Jitte(BOK)》を持たせて攻撃開始。
やがて白きドラゴンが、赤きドラゴンの喉笛を噛み千切った!
中島2-0挑戦者
第3回戦
3人目の挑戦者もまた、赤茶単を選ぶが、中島に渡したデッキは「ナイトメア・サバイバル」。
エクソダスが世に送り出したぶっ壊れエンチャント《適者生存/Survival
of the Fittest(EXO)》と《繰り返す悪夢/Recurring
Nightmare(EXO)》の
二枚を用いて様々なユーティリティークリーチャーをサーチするコントロールデッキである。
「これ、腕が出ちゃいますよ」と不敵な笑みを浮かべる中島を、挑戦者は倒しきることはできるのか!?
先手は赤茶単を駆る挑戦者の手に。カードは揃っているが、土地1枚の手札をマリガン。確実に中島を殺しに行きたいという意思の表れである。
対する中島は笑みを浮かべたまま7枚のハンドをキープ。
挑戦者は《裏切り者の都/City of Traitors(EXO)》から2枚《呪われた巻物/Cursed
Scroll(TMP)》を設置。
中島に対する殺意を見せつける。
しかし、中島も1ターン目《極楽鳥/Birds of Paradise(M11)》からの2ターン目《適者生存/Survival
of the Fittest(EXO)》!
「長くマジックをやっていると、これくらいの引きは出来るんですよ」
としたり顔。
さらには、《ロボトミー/Lobotomy(TMP)》を撃ちこんで、《燎原の火/Wildfire(7ED)》を指定するが…。
挑戦者の手札に《燎原の火/Wildfire(7ED)》はない。
「あれ?…効果、勘違いしてた!恥ずかしい!」
頭を抱えた中島は、仕方なく挑戦者の手札から《マスティコア/Masticore(UDS)》を除外する。
しかし、依然として中島の有利は揺るがない。
《適者生存/Survival of the Fittest(EXO)》から《新緑の魔力/Verdant
Force(10E)》をサーチすると、即座に捨てて赤茶単の天敵である《ウークタビー・オランウータン/Uktabi
Orangutan(6ED)》を呼び出す。
さらに、挑戦者の数少ない赤マナを《オークの移住者/Orcish
Settlers(WTH)》で破壊。《ヴォルラスの要塞/Volrath's
Stronghold(STH)》で再利用して完全に動きを縛りきると、挑戦者にはなすすべもなく……。
中島3-0挑戦者
中島、三連勝!
いかがだっただろうか?それぞれの時代を代表する「王者」のデッキがぶつかり合う姿!
歴史を知ることで、マジックはもっと楽しくなる。そして、もしかしたらもっと強くなれるかもしれない。
たまには古いデッキを持ちだして、戦わせてみるのも一興だろう。
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