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BMO Legacy Final市川 ユウキ(MagicOnline) vs. 伊藤 大明(神奈川) 
 

By Daisuke Kawasaki

市川「三回目ですね」

 すでに市川の密着記事のRound 6で伊藤と対戦し勝利している市川だが、実はレガシーでの二人の対戦はこれが3回め。すでに一度グランプリ京都のサイドイベントで対戦し、市川が勝っているという。

市川「朝、密着記事があると聞いた時には、誰が得する記事になるのかと思いましたけど、こうして決勝までこれたなら、企画に対して恩義を果たせた気がします。あとは優勝したいですね」

 二度ある事は三度あるというが。このまま、市川が勢いのまま勝利するのだろうか。

 だが、使い古された言葉ではあるが、二度ある事は三度あるという言葉にたいして三度目の正直という言葉もある。このふたつの言葉があるということは、結局勝負の結果など些細な理由でいくらでも揺らいでしまうということだ。

 特に、細かいカードの攻防が続くレガシーというフォーマットではそれが顕著だ。

 だからこそ、使い慣れたカナディアンスレッショルドを市川は持ち込んだのだ。

 対する「ブラマス」こと伊藤 大明も、デスブレードを持ち込んだ理由は対して変わらない。

伊藤「なんで今時デスブレードなんだっていいますけど、まぁ、家にあったレガシーのデッキがこれしかないので」

 そして続ける。

伊藤「《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》とか《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》とか、こないだまでスタンダードにあったから使い慣れてますしね」

 メタゲームや新カードのカードパワーいったトピックがあっても、結局最後は自分の使い慣れたカードでの細かいプレイこそが勝負をわける。

 神は細部に宿る。それがレガシーというフォーマットなのだ。




Game 1

 スイスラウンドで上位だった市川が先手でゲームを開始する。

 先手の市川がキープすると、伊藤はマリガン。

市川「今日、僕一回もマリガンしてないんですよ」

 市川は一度もマリガンをしていないだけでなく、スイスラウンドを7勝2ID、そして決勝ラウンドを2勝して上がってきているのでマッチを一回も落としていないのだ。そう考えると市川はいわゆる「今日の人」であり、市川と伊藤の因縁も「二度あることは三度ある」に偏りそうではある。




 続く6枚の手札を伊藤がキープしてゲームが開始する。互いにフェッチランドをセットするが、市川は土地が1枚で止まる。対して、伊藤は2枚めの土地として《Tundra》をセット。市川はまたも土地を引けずに、ディスカードフェイズに《タルモゴイフ/Tarmogoyf》を墓地へ置く。

 この隙に、《呪文貫き/Spell Pierce》をケアして2マナ余剰を作って《思考囲い/Thoughtseize》をプレイする伊藤。

 公開された市川の手札は《死亡/Dead》《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》《目くらまし/Daze》《もみ消し/Stifle》《呪文貫き/Spell Pierce》《稲妻/Lightning Bolt》が2枚というもの。ここで伊藤は長考の末に《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》をディスカードさせる。

 マナスクリューに苦しむ市川を尻目に伊藤は4枚めの土地をセットして《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》をプレイ。これを通したターンエンドに市川は温存し続けたフェッチランドの起動を宣言する。

 一時的に市川が土地をコントロールしなくなったこのタイミングで伊藤はまず、《渦まく知識/Brainstorm》をプレイ、さらに2枚のフェッチランドを起動する。やっとフェッチを起動できるタイミングとなった市川は《Volcanic Island》をサーチする。そして、《死亡/Dead》を《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》を対象にプレイ。

 続くドローで《不毛の大地/Wasteland》を引き当てた市川。小さくため息をつくと、伊藤のアンタップしている《Tundra》へと能力を起動。これが対応無く破壊されると、残された1枚の土地をタップして《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》を戦場へと送り込む。

 返しのターンに伊藤は《思考囲い/Thoughtseize》をプレイし、すでに知っている5枚の手札から《稲妻/Lightning Bolt》をディスカードさせると、フェッチをセットして即起動し、1マナ残して《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》をプレイ。能力で《殴打頭蓋/Batterskull》をサーチする。

 迎えた自身のターン、アップキープにめくった山札は《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》を変身させることは無かったが、それよりなにより渇望した《霧深い雨林/Misty Rainforest》。《稲妻/Lightning Bolt》を《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》にプレイして《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》でアタックする。

 ここで伊藤が戦場に送り込んだのは《真の名の宿敵/True-Name Nemesis》。これをカウンターできない市川、続いてドローした《タルモゴイフ/Tarmogoyf》を戦場に送り込む。

 伊藤は墓地のカードを7枚リムーブする。《宝船の巡航/Treasure Cruise》のムーブだ。3マナを残してプレイされたこの擬似《Ancestral Recall》をカウンターする術を持たない市川。対して、伊藤は2発の《剣を鍬に/Swords to Plowshares》をプレイし、市川の盤面をまっさらにし、《真の名の宿敵/True-Name Nemesis》をタップし市川に3点のダメージを与える。

 この時点では、《剣を鍬に/Swords to Plowshares》のライフゲインもあり、市川のライフが20に対して伊藤は11だが、ついに5枚めの土地がセットされてしまう。

 引いた《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》をプレイしてターンを終えた市川。対して、伊藤は残ったアンタップの《Volcanic Island》を《不毛の大地/Wasteland》。これは《もみ消し/Stifle》せざるをえない。伊藤は2体目の《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》をプレイし、その能力で《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を手札にいれる。

 返しの《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》の誘発能力で見た山札の上が土地だったことで、市川は「負けました」と一言いい、サイドボーディングの準備を始める。

伊藤 1-0 市川

Game 2




 またもマリガンのない市川だったが、今度は伊藤もマリガンはなし。

 1ターン目に《思案/Ponder》をプレイすると、山札のトップは《Tropical Island》《赤霊破/Red Elemental Blast》《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》。手札にさらに《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》がある市川だが、3枚めの土地が現状見えていないため、長考する。

市川「うーん、難しいな……」

 手札が赤いカードばかりの市川。結果、市川は山札のトップをそのままにすることを選択し《Tropical Island》をドローする。

 対する伊藤も1ターン目にフェッチから《Tundra》をサーチして《思案/Ponder》をプレイするが、ここは手札にある数少ない青い呪文、《目くらまし/Daze》で対処する。

 伊藤はそこから2ターン続けてフェッチを起き続け、対して市川もすでに約束されたドローをすべて消化して《思案/Ponder》をプレイする。ここで《不毛の大地/Wasteland》を見つけた市川はそれをドローしてセット、伊藤のアップキープに《Tundra》へと能力を起動する。

 伊藤は、これに対応してフェッチの起動を宣言すると、市川からは対応が無かったため、このタイミングで2枚のフェッチを起動してしまう。さらに1枚土地をセットすると、1マナ余らせて《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》をプレイする。

 返しで、市川は全力での《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》。これをうっかり通してしまった伊藤。返しのターンに《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》をプレイして+1能力で互いに手札を捨てさせる。

 続いて2枚めの《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》をプレイした市川。これは先ほどうち損なった《呪文貫き/Spell Pierce》でカウンターする。市川は、伊藤のアップキープの《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》の誘発によるダメージを《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》へと振り分ける。

 伊藤は《渦まく知識/Brainstorm》をプレイすると、《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》の能力を起動し市川の手札を攻撃すると、さらに《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》をプレイして《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を装備させる。

 だが、市川はここで温存していた《稲妻/Lightning Bolt》を忠誠値3の《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》へプレイし、さらに《二股の稲妻/Forked Bolt》を《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》に打ち込む。これによって、盤面に《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》のみの状態を作り上げる。

 しかし、伊藤が返すターンにプレイしたのは《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》。そして、この《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》を除去できるカードを市川は手札に持っていない。市川のドローに軽く力が入った用に見えたが、思い虚しく対応出来るカードは無く、2枚めの《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》を盤面に追加する。

 一見優勢にも見える伊藤だが、ライフが回復できない状況下での毎ターンの4ダメージは決して無視できるものではない。《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を装備した《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》でアタックすると、伊藤のライフは9にする。ここで市川は2枚の《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》を盤面に追加し、チャンプブロックの体制を作り、《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》のカウンターをダメージの追加ではなく除去に使うことを強いる。

 アップキープにライフが5となった伊藤は市川の望み通り《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》のカウンターで2体の《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》を除去すると、《思案/Ponder》をプレイ。ここで少考した市川は、最後の手札である《赤霊破/Red Elemental Blast》を打ち込み、伊藤が手札を充実させることを妨害する。

 再び、市川のドローに力がこもる。そして、祈るようにキャストした《稲妻/Lightning Bolt》は伊藤のライフを《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》の範囲内とし、最終ゲームに挑む権利を与えた。

伊藤 1-1 市川

Game 3




 本日最後のゲーム、結局市川はここでもマリガンせず、一日の間マリガンを一度もしないこととなる。果たしてこのゲームに勝利し、マッチも一度も落とさずに一日を終わらせられるのか。

 先手の伊藤も7枚の初手をキープすると、《汚染された三角州/Polluted Delta》から《Underground Sea》を出し、《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》をプレイする。対して、市川は《Volcanic Island》をセットしてターンを終了。

 伊藤は《思案/Ponder》をプレイすると、2枚めの《汚染された三角州/Polluted Delta》をセット。対して市川は伊藤のターンエンドに《死亡/Dead》を《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》へとプレイ、伊藤は対応して《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》の能力で青マナを産み出し、《渦まく知識/Brainstorm》。伊藤はゆっくりと2枚のカードを山札の上へと戻すと、フェッチを起動して2枚目の《Underground Sea》を戦場へ置き、《呪文貫き/Spell Pierce》をプレイ。市川はこれを《目くらまし/Daze》でカウンターする。

 ピッチコストで手札に戻した《Volcanic Island》を再びセットした市川に対して、伊藤は再び《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》を戦場に送り込む。

 このターンエンドに《渦まく知識/Brainstorm》をプレイした市川は自身のターンに《不毛の大地/Wasteland》をセットすると《二股の稲妻/Forked Bolt》を《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》へとプレイ。対応して伊藤は《渦まく知識/Brainstorm》をプレイし、長考する。結果、山札に2枚のカードを戻した上で、再び《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》を墓地へと送り込む伊藤。ここで伊藤が白マナよりも2枚めの黒マナの確保を優先したことを踏まえて《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》をケアし、市川はこの隙に《不毛の大地/Wasteland》で《Underground Sea》を破壊する。

 《不毛の大地/Wasteland》をセットし、3マナを確保した伊藤は、フルタップでの《真の名の宿敵/True-Name Nemesis》。ピッチのカウンターを持たない市川はこの怪物が戦場に着地することを咎めることができない。

 《思案/Ponder》によってフェッチランドをみつけた市川は2枚めの土地をセットした上で再び《思案/Ponder》でさらに土地を手に入れる。

 この返しで伊藤は《思考囲い/Thoughtseize》をプレイ。公開された《霧深い雨林/Misty Rainforest》《破壊的な享楽/Destructive Revelry》《呪文嵌め/Spell Snare》《もみ消し/Stifle》が2枚という手札から《破壊的な享楽/Destructive Revelry》をディスカードさせる。

 手札を確認した伊藤は、《思案/Ponder》を打った後に、《不毛の大地/Wasteland》で市川の《Tropical Island》を破壊、さらにフェッチをセットする。




 だが、返す市川のトップは《思案/Ponder》で仕込んであった《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》。さらにその下に積み込んだ《乱暴/Rough》で変身すると《霧深い雨林/Misty Rainforest》で更なるクロックを、具体的にはダメージレースを一気に逆転させる火力を求める。この《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》でのアタックで伊藤のライフを13にできるものの、市川のライフは9であり、残り3ターンの間にダメージ量で上回らなければならないのだ。

 伊藤は、淡々と《真の名の宿敵/True-Name Nemesis》で市川のライフを削っていくと、市川の逆転の手を防げるよう、手札の充実をはかる。《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》の能力起動を《もみ消し/Stifle》で防いだ市川だったが、ここで伊藤は《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》をプレイ。-2能力を起動し、市川の《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》を除去しようと試みる。この時点で、市川の手札には《稲妻/Lightning Bolt》があり、この《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》を守れれば、もう1枚《稲妻/Lightning Bolt》を引くという条件付きではあるが、自分のライフが無くなる前に伊藤のライフを削り切る可能性が残るのだ。

 市川は、《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》の能力へと、《もみ消し/Stifle》をプレイする。

 だが、伊藤の残された2枚のカードは、青いカードと《Force of Will》。

 この伊藤のプレイで、市川の逆転の目はほぼなくなった。そして、続く市川のドローは、逆転のチャンスを作りうる《稲妻/Lightning Bolt》だった。

伊藤 2-1 市川

市川「あー、《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》の能力は無視だったかぁ」

 マッチが終了すると、市川はそう語った。たしかに《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》を無視し、《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》をケアしていれば《Force of Will》をくぐり抜け、2枚めの《もみ消し/Stifle》で《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》によるアタックを可能としていたのだ。

 その場合、最後の最後に引き当てた《稲妻/Lightning Bolt》はドラマティックなトップデックとして記事に書かれたことだろう。

 だが、そうはならなかった。2枚めの《Underground Sea》の時にはケアした《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》だったが、それ以上に、伊藤が《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》で有効牌を引いてしまう見えない可能性を恐れてしまったのだ。

 後から、検討すれば、もしかしたら《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》を無視してすでに予測できていた《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》だけに集中してケアすることもできたかもしれない。試合後そう語った市川だったが、しかし、極限状態の中で細い勝ち筋を見出さなければならなかった市川にとって、その場でとった選択こそがすべてだ。

 試合後、伊藤がつぶやく。

伊藤「やっと勝てた」

 僅かなプレイの差で変わっていたかもしれないゲームの結果は「二度ある事は三度ある」ではなく、「三度目の正直」の側へと傾いた。

 BigMagicOpen、略してBMOじゃなくて、ブラマスおめでとう、略してBMOだね。

 くだらない符号かもしれないけれども、そういう小さいことの積み重ねもゲームの結果を変えてたのかもしれない。

 なにせ、観戦者のほとんどがサイドアウトしているだろうと思っていた《Force of Will》をケアすることは難しかったかもしれないし、それを残す選択をした伊藤に勝機がもたらされたのは事実なのだ。

 だから最後はこの言葉で締めくくろう。

 ブラマスこと伊藤 大明おめでとう!第二回BigMagicOpenLegacyチャンピオン!



 
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