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BigMagic所属プロ市川 ユウキ密着24時間(後編) 
 

By Daisuke Kawasaki

【前編はこちら】

 前編では使い慣れたカナディアンスレッショルドで5連勝を飾った市川。

 後編のラウンドに入る前に、まずは自慢のデッキについてインタビューをすることにした。






市川「といっても、メインボードは基本的にあまり語ることはないと思うんですよね。正直、エターナルフェスティバルの時から変わったのは……《二股の稲妻/Forked Bolt》くらいですかね。これはメタ的にエルフと《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》が増えるだろうということで投入しました」

川崎「むしろ、メインボードというか、今回に関してはなんでこのデッキを使用したのか、の方が聞きたいところなんですよね。『タルキール覇王譚』が発売されて、例えばモダンは《宝船の巡航/Treasure Cruise》が跋扈してますし、レガシーでも、それこそ青赤Delverのように《宝船の巡航/Treasure Cruise》のカードパワーを利用するために緑を切ったデッキが増えているじゃないですか」

市川「そうですね。さっき言った《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》対策というのはそのへんのデッキを意識している部分はあります」

川崎「同じような赤青緑のクロック・パーミッションでも、《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》のスレッショルドよりも《宝船の巡航/Treasure Cruise》の探査を優先して採用したレシピも最近でてきていますよね。そんな中で《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》入りのデッキをあえて選択した理由を教えていただきたいなと」

市川「最大の理由はもちろん、使い慣れているからなんですけど、そもそも、《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》を抜いた赤青緑Delverは、僕に最初にカナディアンスレッショルドを貸してくれた友人が、『あれはデッキじゃない』って言っていたのでテストプレイもしてないんですよね」

川崎「デッキじゃない、といいますと?」

市川「うーん……そもそも、カナディアンスレッショルドに代表されるDelver系のデッキってロングゲームを見据えたデッキではないので、カードを3枚引いている場合じゃないっていうのが大きいんですよ。だったら《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》で3点殴っている方がデッキ全体のゲームプランにあっているっていうのが理由ですね」

川崎「なるほど。特に除去耐性が高い《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》は重要だと」

市川「そうですね。《タルモゴイフ/Tarmogoyf》も《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》も除去はされてしまいますから。結局、3枚引いてもゲームプランを作れないことの方が多いんじゃないかと思うんですよ」

川崎「言われてみると、ここまでのゲームを見てきても市川さんはゲームプランを組み立てていく中で《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》を効果的に使っているゲームが多いですね。端的に言えば中盤を超えた消耗戦になるまで《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》を我慢するプレイが多かったように見えます」

市川「青白奇跡なんかを相手にすると特にそうですね。序盤のカウンターでのゲームメイクが中心のタイミングでは除去に弱い《タルモゴイフ/Tarmogoyf》や《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》をカウンターさせて、後半の今引きの除去で対応していかなければいけないような展開になって、マナは余ってカウンターが効果的でなくなってきたところで《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》を投入するというのは、基本的なゲームプランだと思います」

川崎「ちなみに、青赤Delverはどうですか?」

市川「あちらは少しMagicOnlineで回してみたんですけど、手札が無いと弱いカードが多いのが気になったんですよね」

川崎「そういう意味では大量に引ける《宝船の巡航/Treasure Cruise》頼みのデッキだと」

市川「そうですね。かなり線が細いです。カナディアンスレッショルドのクリーチャーたちはすべて手札が無くてもある程度以上のプレッシャーをかけられるんで、やっぱり個人的には、でいいですけどカナディアンスレッショルドの方がいいですね」

川崎「なるほど。具が少ないのが苦しいと」

市川「あと色マナがでるだけの土地が多すぎて土地17枚にもかかわらずマナフラッドで負ける事が多いのも気になりましたね。まだレシピが固まっていない過渡期のデッキというのはあるかもしれませんけど、現状では使おうとは僕は思いませんでした」

川崎「大会開始前は大きな話題になっていた《宝船の巡航/Treasure Cruise》も、モダンはともかくレガシーでは禁止を噂されるほどではないと」

市川「断言はしませんけどね!モダンは対応できるカードは少なすぎるので禁止はあり得ますけど、レガシーはまだ対応できないってほどのカードでは無い気がします」

川崎「ありがとうございます。続いて、自信作のサイドボードですが……」



市川「そうですね、サイドボードはかなり良い出来だと思っています」

川崎「想定されたメタゲームのデッキはどんなデッキですか?」

市川「青白奇跡・エルフ・青赤Delverはかなり意識しました。特に、青白奇跡はレガシーをやり込んでいるプレイヤーから、レガシーに不慣れなプレイヤーまで使ってくるだろうと思ったので、とにかく、青白奇跡にだけは勝てるように組みましたね」

川崎「レガシーに不慣れなプレイヤーもカードパワーの高さで勝てる可能性が高いですし、レガシーに慣れたプレイヤーも市川さんの言葉を借りれば『うまぶる』事で勝率をあげられるってことですか」

市川「そうですね。僕も青白奇跡を使い慣れてるならうまぶりたかったんですけど、慣れてなかったので、何があっても倒そうと。そういうわけで、《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》を3枚とりましたね。ただ、ここはコンボなどの他のデッキへの対応力も上がる《森の知恵/Sylvan Library》でも良かったんじゃないかというアドバイスを友人からはもらっています」

川崎「なるほど。先ほどあげたデッキ以外だと、《墓掘りの檻/Grafdigger's Cage》と《真髄の針/Pithing Needle》あたりが汎用的なサイドボードの枠ですかね」

市川「はい。このへんと《水没/Submerge》はレガシーでカナディアンスレッショルドを使う上での嗜みですね」

川崎「なるほど。実際、想定したデッキへはどのようにサイドボーディングするのですか」

市川「まずは、青白奇跡ですね」

In:《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》×3 《赤霊破/Red Elemental Blast》×2 《呪文貫き/Spell Pierce》《真髄の針/Pithing Needle》《破壊的な享楽/Destructive Revelry》 Out:《死亡/Dead》《二股の稲妻/Forked Lightning》《タルモゴイフ/Tarmogoyf》×4

川崎「アウトの枚数が2枚足りないようですが」

市川「そこは先手と後手で入れ替えますね。後手では効果的に使いにくい《目くらまし/Daze》を2枚抜きますが、先手の場合は《目くらまし/Daze》で強引に押しこむゲームになるので、《Force of Will》を2枚抜きます。後手の時は1枚多く引いてるので《Force of Will》のディスアドバンテージがそこまで大きく影響しないんですよね」

川崎「続いて、エルフですか」

市川「エルフはこういう感じになります」

In:《真髄の針/Pithing Needle》《二股の稲妻/Forked Lightning》《墓掘りの檻/Grafdigger's Cage》《破壊的な享楽/Destructive Revelry》《水没/Submerge》×3《乱暴/Rough》×2

Out:《もみ消し/Stifle》×4 《目くらまし/Daze》×4 《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》

市川「除去を増やして、咬み合わないカウンターを減らす形ですね」

川崎「エルフ戦の後でもおっしゃってましたが、メインボードでは咬み合わない《呪文貫き/Spell Pierce》はサイド後は残すんですね」

市川「そうですね。エルフがサイドプランで取ってくるカードに対しては噛みあう可能性が高いので、残すことにしています」

川崎「最後は、青赤Delverですね」

市川「うーん……さっき言ったように過渡期のデッキなので、人によってレシピが違うんですが、大体こんなかんじで考えています」

In:《二股の稲妻/Forked Bolt》《乱暴/Rough》×2 《赤霊破/Red Elemental Blast》×2

Out:《目くらまし/Daze》×4

市川「あとは相手のデッキの構成によって《呪文貫き/Spell Pierce》か《Force of Will》を1枚抜くかなと思うんですが、逆にサイドから《破壊的な享楽/Destructive Revelry》を入れる場合もありそうですね」

川崎「なるほど。まだ過渡期なデッキだけに、役にたちうるカードをサイドにある程度用意しておいて臨機応変なプランが求められることもあるというわけですね」

市川「まぁ、そうですが、今回はとにかく青白奇跡を倒す、ってのが第一目標なので。青白奇跡に負けたら切腹します」

 宣言通り、そして読み通り、ここまでの5戦中3戦を青白奇跡と戦い、ほぼすべてのマッチで《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》を活躍させて連勝してきた市川。

 果たして後半戦はどうなるのか、それでは見ていこう。



Round 6:Nakamura Takafumi

 ここまで最大の想定敵であった青白奇跡とのマッチアップが多かった市川だったが、ここで同型であるカナディアンスレッショルドとの対戦となる。

 Game 1はお互いに妨害手段よりも土地とクリーチャーを多く引く展開となり、互いに《タルモゴイフ/Tarmogoyf》が並んでいくが、Nakamuraの3体に対して、4体目の《タルモゴイフ/Tarmogoyf》と《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》を追加で引き当てた市川が押し切る展開となる。

 続くGame 2では、うってかわって互いに妨害手段を引く展開となる。盤面のクロックではNakamuraが《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》を着地させリードするものの、フェッチの起動に対する《もみ消し/Stifle》を《赤霊破/Red Elemental Blast》でカウンターしたりと、相手の妨害を防ぎつつ《不毛の大地/Wasteland》で土地をせめた市川がリソースで有利になる展開。

 この状況から《水没/Submerge》で《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》を山札に戻されてしまうと、カウンター合戦で失うことを恐れてかNakamuraは再展開をすることができない。対する市川はマナを残してスレッショルド状態の《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》を着地させることに成功し、ついにクロックでも逆転する。

 なんとか土地を引いたNakamuraだったが、すでにクロックでもリードしている市川に追いつくのは至難の業。市川は、《赤霊破/Red Elemental Blast》や《Force of Will》、《水没/Submerge》といった妨害手段を駆使してNakamuraの逆転の可能性を封じていくだけでよいのだった。

総合成績:6勝

Round 7:Ito Motoaki

 破竹の6連勝によって、ここで勝利すれば2回のIDでほぼトップ8進出が約束される市川。ここで対戦するのは、ブラマスこと伊藤の使うデスブレード。

 Game 1は《不毛の大地/Wasteland》2枚を使って伊藤の色マナを市川が攻めていく展開。対して、伊藤も《不毛の大地/Wasteland》を設置してはいるのだが、市川は必要な状況までフェッチを起動しないことで、伊藤に色マナを攻撃するチャンスを与えない。

 伊藤は《思考囲い/Thoughtseize》で《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》を1体ディスカードさせたのだが、土地を引けないうちに、市川が十分な枚数のフェッチを揃え、一気に起動することで《不毛の大地/Wasteland》の影響を最小限に抑えた状態でプレイしたスレッショルド状態の《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》に対処するだけの土地を用意することができなかった。

 Game 2は静かな展開から、伊藤が《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》をプレイしたところでゲームが大きく動く。ここで《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》をカウンターできなかった市川は、戦場に出た時の誘発効果、すなわち《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》のキモである装備品をサーチする能力を《もみ消し/Stifle》するプランに切り替える。だが、この《もみ消し/Stifle》は《Force of Will》でカウンターされてしまう。

 《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》こそ、伊藤の色マナを《不毛の大地/Wasteland》で潰しての《二股の稲妻/Forked Bolt》で対処する市川だったが、続く《宝船の巡航/Treasure Cruise》をカウンターすることができず、圧倒的なアドバンテージ差を付けられてしまう。
 このアドバンテージ差を活かして《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》を2体展開していき、さらに《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》まで追加する伊藤。

 しかし、ここで市川は《真髄の針/Pithing Needle》を引き当て、これを通して《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》を指定、さらにマナが《破壊的な享楽/Destructive Revelry》で《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を破壊する。《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》3体でアタックしライフを削っていく伊藤だったが、こうなってしまうと、カナディアンスレッショルドのクロックに追いつかれてしまうのは時間の問題なのだった。

総合成績:7勝

 こうして、7連勝した市川。

Round 8:ID




Round 9:ID



 無事、2戦連続でIDをすることに成功し、トップ8入賞を確定させた。

 メタゲームを的確に読みきったサイド選択と、使い慣れたデッキによる的確なプレイによって無敗のままトップ8入賞を決めた市川の残る試合の様子は、トップ8のカバレージに譲ろうと思う。




 
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