By Daisuke Kawasaki
プロツアー『ニクスへの旅』
プロツアー『マジック2015』
ふたつのプロツアーでトップ8に入賞し、今、もっとも注目されている日本人プレイヤーといっていい存在、それが市川
ユウキだ。
元々はMagicOnlineを中心に活躍していたプレイヤーであったが、プロツアー出場を期にメキメキと頭角を表し、今季はプラチナレベルのトッププロとして活躍している。
そんな市川がBigMagicとスポンサー契約を結んだというニュースが世間を賑わせたのも記憶に新しい所だろう。
もちろん、BigMagic所属プロということで、本日開催されているBigMagicOpenにも参加している、というわけで、普段、プロプレイヤーがどのように大会に参加しているのか興味がある方のために、今日は一日市川の密着取材をしたいと思う。
プロプレイヤー市川 ユウキの横顔
本日はレガシーのBigMagicOpenにお馴染みのカナディアンスレッショルド(青赤緑の軽量クリーチャーと妨害呪文で構築されたいわゆるクロック・パーミッション)で参加するという市川。実際のデッキテクやマッチの状況をお伝えする前に、まずは、簡単なインタビューをお届けしたいと思う。
日頃「マジックは趣味の延長」と公言する市川が、どのようなスタンスでプロ契約をし、プロツアーに参戦しているのか、中々に興味がある話題ではないか。
川崎 「まずは、多くの方が興味ある話題だと思うのですが……所属プロというのはどのようなことをするのですか？」
市川 「そうですね……ボランティアですかね」
川崎 「ボランティア、といいますと？」
市川 「近所のゴミを拾ったり、そういった感じの活動を毎日しています」
川崎 「すみません、ちょっとよくわからないのですが……」
市川 「ごめんなさい、これは僕の個人的な活動の話でした。BigMagicさんとの契約は、イベントでBigMagicのシャツを来てPRすることと、BigWebで記事を書くことが主な内容ですね」
いきなり、少しわかりにくい入り方をしたが、これは実際にかわされた会話である。
とはいえ、序盤の冗談は少し出来が悪いものの、BigWebで掲載されている市川の記事は実践的で非常にわかりやすいと評価が高い。
市川ユウキ(瀬畑太郎)
”プロツアーニクスへの旅”に向けての調整録
市川ユウキのGP神戸調整録
個人的には、このあたりの調整録はかなりおすすめの記事なので、未読の方にはぜひとも目を通していただきたいと思う。
閑話休題、市川のジョークのフォローのために記事の紹介を挟ませていただいたが、インタビューを続けたいと思う。
川崎 「記事の執筆などマジック絡みの活動が増えていると思うのですが、一方でプロ契約をしてよかったと思いますか？」
市川 「そうですね……困った場合はカードを融通してもらうことも可能ですし、実際、プロツアーへのモチベーションも変化している部分もあるので契約してよかったと思っています」
川崎 「実際、プロツアーでの活躍が増えたのもあって、市川さんのファンも増えてますよね」
市川 「そうですねぇ……僕個人のニコ生なんかも、最近は公式の放送などで僕を見てくる人の比率が増えてきたので、僕の意見に好意的な人が多くなったのを実感はしていますね。昔はもっと殺伐としていましたからね、僕の放送」
川崎 「その時代を懐かしいと思うこともありますか」
市川 「いや、まぁ、それはないです。ただ、逆にもっと同じ土俵で戦ってやろうって気概でコメントなどをしてくる人がいるのもたまになら面白いので、そういう人が来ても嬉しいですよ」
川崎 「そういえば、先日、僕もニコ生を見せていただいんたんですけど、いくらでも自身の写真のトークンを配るしサインもする、と宣言していましたね」
市川 「えぇ。日曜日ももちろん、僕は会場にいますので、いくらでも声を掛けていただければトークンも差し上げますし、サインもしますよ」
と言った後に、「ただ、一応空気を読んでもらえると助かります」と市川は付け加えた。マッチに敗北した直後などでももちろん対応はできるが、やはり、機嫌が良さそうなタイミングを見計らった方がお互いにいい気持ちで対応できるだろう、とのこと。
最後に、プロツアーに継続参戦するようになって環境がどう変わったかについても聞いてみた。
市川 「そうですね……やはり昔はプロツアーに向けてレベルの高い練習をできるという環境がなかったので、今のように強豪プレイヤーたちと練習できる環境があるというのは非常に助かりますね」
川崎 「プロツアーが新セット発売直後の情報が少ない環境で開催されるようになったので、プレイヤーコミュニティの重要性がましていますものね」
市川 「構築もそうですが、個人的にはリミテッドがまだ地力が足りないと思っているので、強いプレイヤーと練習して話を聞ける環境にあるのは助かっていますね」
川崎 「例えば菊名合宿などですか？」
市川 「そうですね。今回も菊名合宿での経験はすごく助けられました。ただ、今回のプロツアーの反省点として、ほぼ菊名合宿でしか練習してない状態だったので、環境把握の深さはあったものの、幅が狭かったというのがあるので、次回はさらに他の練習環境で1日か2日でもやれたらと思っています」
川崎 「具体的にはどういうことですか？」
市川 「今回、菊名合宿ではスゥルタイなどの遅めのアーキタイプが優勢だったので、対向するべく全体的に環境が遅くなっていた傾向がありました。それはもちろん、そういうアーキタイプを掘り下げるという意味ではいい練習だったのですが、本戦では早めのデッキを作ってくる相手に何戦かやられていて、それらの流れの経験が足りなかったように思うので」
引き出しをもっと増やすための努力が必要だったと語る市川。
試合後には飽くなき反省をする事でもしられる勝負師の市川だけに、より自身が強くなるためには貪欲なのだろう。
最後に今シーズンの目標を聞いてみた。
川崎 「今シーズンの目標は、やはりプラチナですか？」
市川 「まぁ、なれたらいいんですが……まずは世界選手権でできるだけプロポイントを稼ぐことを目標にします」
というわけで、いよいよ、BigMagicOpen本戦の市川の対戦をお届けしよう。
Round 1:Harasawa
Takashi
このマッチは、本日最初のフィーチャーマッチとなったので、別ページのカバレージを参照いただきたい。
Round
1:市川 ユウキ(MagicOnline) vs. 原沢
貴志(埼玉)
総合成績：1勝
Round 2:Nishikawa
Yukihiro
2ラウンド目では、エルフと対峙することとなった市川。
Game 1では、序盤の《死儀礼のシャーマン/Deathrite
Shaman》2体を《稲妻/Lightning Bolt》と《目くらまし/Daze》で対処し、初動を潰したところで、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》と《敏捷なマングース/Nimble
Mongoose》で攻め立てる。
これを《ワイアウッドの共生虫/Wirewood
Symbiote》でエルフを戻して耐えしのぐプランだったNishikawaだったのだが、《エルフの幻想家/Elvish
Visionary》を《呪文嵌め/Spell Snare》、さらに続けてフルタップで召喚した《ラノワールのエルフ/Llanowar
Elves》を《目くらまし/Daze》されてしまうことでプランが崩壊する。
《不毛の大地/Wasteland》や除去を駆使してNishikawaが十分なマナを確保できない状態を維持した市川が、最後の望みでプレイされた《緑の太陽の頂点/Green
Sun's Zenith》を《呪文貫き/Spell
Pierce》したことで、投了した。
続くGame 2は、序盤こそ《遺産のドルイド/Heritage
Druid》と2枚の《ドライアドの東屋/Dryad
Arbor》によって先行されたものの《乱暴/Rough》で一掃し、返しの《エルフの幻想家/Elvish
Visionary》を《呪文嵌め/Spell Snare》することで自分のペースに持ち込み、そのままクロックを確保して殴りきった。
市川 「Game
1で初手に2枚あった《呪文貫き/Spell Pierce》が腐らなかったのはかなりのラッキーでしたね」
クリーチャー主体のコンボデッキであるエルフ相手に効きにくい《呪文貫き/Spell
Pierce》がうまく機能したのはラッキーだったが、しかし、一方でこのマッチアップにおける《呪文貫き/Spell
Pierce》にたいしてこんな意見も聞くことができた。
市川 「メインは腐る可能性がある《呪文貫き/Spell
Pierce》なんですけど、だからといってサイドボードで抜くわけでもないんですよね」
エルフがこのマッチアップでサイドボーディングしてくる可能性のある《窒息/Choke》や、アグレッシブプランである《自然の秩序/Natural
Order》をカウンターできる《呪文貫き/Spell
Pierce》はサイド後こそ活躍するカードなのだという。
総合成績：2勝
Round 3:Saito Nobuo
3回戦の対戦相手は、Happymtgにてレガシーの戦略記事
のぶおの部屋
を連載している斉藤 伸夫。使用するデッキは、本人も記事内で解説している青白タッチ赤の奇跡デッキだ。
Game 1で後手となった市川は、先手の斉藤が1ターン目に《思案/Ponder》を撃った隙に《敏捷なマングース/Nimble
Mongoose》をプレイする。その後、斉藤がフェッチランドを引けないため《渦まく知識/Brainstorm》を撃つタイミングを逃している間に、ターンエンドに《渦まく知識/Brainstorm》から自身のアップキープにフェッチ起動という動きを2ターン連続で繰り返し手札を充実させる。斉藤がついにフェッチランドを引き当てセットした返し、市川は《秘密を掘り下げる者/Delver
of Secrets》を追加する。
勝負の焦点となったのはこのターンエンド。まず、斉藤は《渦まく知識/Brainstorm》をプレイ。そして、ターンエンドに《剣を鍬に/Swords
to Plowshares》を《秘密を掘り下げる者/Delver
of Secrets》へと打ち込む。これは通した市川。続く自身のドローで《渦まく知識/Brainstorm》で積み込んでいた《天使への願い/Entreat
the Angels》の奇跡を誘発させ、フェッチを起動する。
このフェッチに対応して《渦まく知識/Brainstorm》をプレイした市川は斉藤の奇跡解決を許可、Xの値を尋ねる。斉藤はすべてのマナを使いきってX=2を宣言する。
すべてのマナをタップしたことを確認して市川は《目くらまし/Daze》をプレイ。斉藤が《Force
of Will》をピッチで使用するが2枚めの《目くらまし/Daze》。斉藤も2枚目の《Force
of Will》を持っていたものの、市川の手札には《Force
of Will》が。続くターンに市川が残った手札である《タルモゴイフ/Tarmogoyf》をプレイしたことで、互いのリソースがほぼ枯渇し、ただ、市川のクロックのみが残る盤面となってしまう。
しばらくはトップデックで凌いだ斉藤だが、そのままライフを押し切られてしまう。
続くGame 2は斉藤の1ターン目の《師範の占い独楽/Sensei's
Divining Top》を市川が《Force of
Will》する所からスタートする。互いに《思案/Ponder》や《渦まく知識/Brainstorm》で手札を充実させるが、市川の《もみ消し/Stifle》が要所でささり、フェッチの起動を2回打ち消すことに成功する。
そして、このマナ差がゲームの焦点となった。
斉藤は、《相殺/Counterbalance》《石鍛冶の神秘家/Stoneforge
Mystic》とプレイし、《石鍛冶の神秘家/Stoneforge
Mystic》から《殴打頭蓋/Batterskull》をサーチとビッグプレイを見せるが、市川は《相殺/Counterbalance》を《紅蓮破/Pyroblast》、《石鍛冶の神秘家/Stoneforge
Mystic》を《稲妻/Lightning Bolt》で丁寧に対処する。
そして、5マナを支払ってプレイした《殴打頭蓋/Batterskull》が《呪文貫き/Spell
Pierce》されてしまう。
この攻防によって互いの盤面が整理されたところで、温存されていた《敏捷なマングース/Nimble
Mongoose》が登場する。
《師範の占い独楽/Sensei's Divining
Top》で回答をもとめる斉藤だったが、まずは《真髄の針/Pithing
Needle》で《師範の占い独楽/Sensei's
Divining Top》が封じられた後に《硫黄の渦/Sulfuric
Vortex》が登場し、斉藤のライフは削りきられてしまうのだった。
ここまで、2回の奇跡デッキとの対戦で活躍した《硫黄の渦/Sulfuric
Vortex》。
市川 「今回、奇跡が多いと思ってきたんで、奇跡だけには負けないようにしてきたんですよ。《硫黄の渦/Sulfuric
Vortex》もサイドに3枚とってます」
というわけで、狙い通りのメタで快勝を続ける市川であった。
総合成績:3勝
Round 4:Furuya Youhei
続くラウンドも、奇跡デッキとマッチアップした市川。
Game 1は、最後の3ライフまで削り《稲妻/Lightning
Bolt》をプレイしたものの、《目くらまし/Daze》をケアし《対抗呪文/Counterspell》を追放しての《Force
of Will》というプレイに至ったFuruyaに押し負け、一方のGame
2は、長い消耗戦の末に《敏捷なマングース/Nimble
Mongoose》を通すことに成功し、最後にライフを詰め切るという勝ち数をタイにする。
この時点で残り時間は6分。
互いに素早くシャッフルをし、迎えた最終ゲーム。
ここで、市川は1ターン目の《敏捷なマングース/Nimble
Mongoose》から、FuruyaのX=1の《仕組まれた爆薬/Engineered
Explosives》を《呪文貫き/Spell Pierce》でカウンターすると、2マナで止まったFuruyaの《Karakas》を《不毛の大地/Wasteland》で破壊する。
そして《秘密を掘り下げる者/Delver of
Secrets》をプレイすると、これが続くターンにナチュラルに変身する。そして、追加される《硫黄の渦/Sulfuric
Vortex》。
圧倒的なスピードで展開されるクロックにFuruyaは手を差し出すことしかできないのだった。
市川 「さすがにブン回りでしたね」
総合成績：4勝
Round 5:Matsui Hisataka
ここまで4連勝の市川は、グランプリ・名古屋で因縁のある松井とマッチアップし、再びフィーチャリングエリアへと呼び出される。
このマッチも、別ページのカバレージを参照いただきたい。
【観戦記事】Round 5：市川 ユウキ(MagicOnline
vs. 松井 久剛(千葉)
総合成績：5勝
こうして、折り返し地点の5ラウンド目までを全勝で折り返した市川。
はたして、後半はどうなるのか。
デッキテックも織り交ぜた、後編をお楽しみに。
| |
